ローコンバットは普段の生活でも生かせるのでしょうか。
■ホロウェイ氏:
例えば、道を歩くだけでもたくさんの危険が隠れている。
だが、特に日本では平和ぼけしているのか、周りを意識していない人があまりに多い。
スマートフォンの操作に夢中になって周囲への注意力が低下すると、犯罪に巻き込まれたり事故に遭ったりする可能性が高くなる。
ローコンバットはまず基本動作として「スキャン」を徹底する。リスクを早期に見つけるため、常に周囲を見渡す動きのことだ。
気づきが遅れると、次の行動に移るまでの判断時間も短くなり、被害者になる危険性が高まる。
人生は常にサバイバル。
常に自身を守る習慣をつけ、ライフスタイルの中に取り込むことが重要だ。
実際にはスキャンから行動に至るまでの一連の過程が重要になる。
その流れを体系立てたのが「OODA(オーダ)サイクル」の考え方だ。
「O(observe=観察)」「O(Orient=状況把握)」「D(Decide=決定)」「A(Active=動く)」の4段階に分かれており、これらを2秒以内に実行しなければならない。なぜか。
もたもたしている間に、攻めてくる相手にやられてしまうからだ。
気づきが遅れた上に「もうダメだ」とネガティブな考えに支配されると、簡単に被害者になってしまう。
■松田氏:
オーダサイクルでは一瞬の判断力が求められるため、決まった「型」だけでは臨機応変な対応ができない。
型にはまらないからこそあらゆる状況に対処できるのだが、一方で、徹底的に型を訓練するからこそ〝無形〟になれるというパラドクスがある。
つまり、どんな状況にも冷静に立ち向かうスキルと自信を獲得することで、相手やその時の環境に合わせた戦いができるという意味だ。
この逆説のコンセプトがローコンバットの魅力だ。
何が起こるか分からないからこそ、状況に応じて水のように形を変える柔軟性が重要になるのはビジネスの世界も同様だ。
「2秒以内」に判断する集中力を養うためにどのような訓練をしていますか。
■ホロウェイ氏:
人間は誰しも自然に「今通っている道は正しいかな」と思うときがある。
自分に関して言えば(集中力を高めるのに)効果があった方法は瞑想(めいそう)だ。
自分の呼吸や振動のみを聞いて雑念が入ってこないように集中する。
ただ、自分にも考えをきれいに掃除できないときもあった。
そんなとき、豪州にあるタイの寺へ行き「瞑想がうまくいかない」とお坊さんに相談すると「ムエタイやっているんでしょ。じゃそれがお前の瞑想だ」と言われた。確かにその通り。
ムエタイをやっているときは集中してリフレッシュできる。
つまり、特別な方法はなく、自分に合うものであればそれでいい。